謎はいつもそこに

子供の頃から自然に生活の中にまざっていた不自然なものたちのお話。

戦争の夢を見た。

戦争の夢を見た。

それはある日突然始まった。

 

 

日本を侵略したのはアメリカや中国ではなく、世間では全くノーマークの国だった。

そう、政治に詳しい人でも驚くような。

 

でも、その国は突然日本にやって来て、今からここは俺たちのものだと言った。

 

それは本当に何の前触れもなく、ある日突然始まった。

インドの高額紙幣が、一夜にしてゴミになったように。

 

私たちは何かを考える暇もなかった。

次から次にどこのエリアに行っても、その国の軍隊や兵士がもの凄い数集まっていた。

 

銃声はもちろん飛び交っていた。

 

私は息子と、知ってる子供たちがたくさん集まる場所に来た。

そこで、前に立つひとりの兵士が大きな声で一言だけ言った。

 

突然始まった戦争だけど、たった数日でもう聴きなれてしまった、その国の「敬礼」の意味の言葉だ。

 

反射的に思わず私も息子も敬礼のポーズをとった。その場にいる子供たちも、半分くらいは瞬発的にポーズをとり、残りの半分くらいは反応できずに敬礼をしなかった。

 

それを見たその兵士は何度か頷き、簡単にチーム分けを決めるように

 

「敬礼できた子供は、できなかった子供を前に連れて来い」と言った。

 

私の横にはよく知ってる兄妹がいた。もうひとり、よく知ってる男の子もいた。

その兄妹の、兄の方は敬礼できていなかったので、妹は兄を前に連れて行った。

 

よく知ってる男の子も敬礼できなかったらしく、敬礼できたお友達によって前に連れて行かれた。

 

3秒後、前に連れて行かれた子供たちはみんな銃殺された。

 

 

 

 

 

場面は変わり、もう以前の面影もなく廃墟のようになっている駅ビルの2階に、母とふたりで立っていた。夜だった。

 

近くにいた年配の女性が、外へ逃げるならこの道を使うといいと教えてくれた。

そこは駅ビルから一階の地上に出られる階段なのだが、きれいに清掃されて華やかな装飾に彩られていた以前の姿とは、似ても似つかない空間が薄闇に広がっていた。

 

「必ずひとりずつ、なるべく止まらないで走っていきなさい」

 

年配の女性の言葉を聞いて私たちは頷き、母が先に階段を駆け降り始めた。

母の姿がかろうじて見えるくらいの距離を保って、私もあとに続く。

 

走っているとそのうち外に出られたが、母も私も走り続けた。

道はゆるやかな螺旋を描くように、下り道が続いている。

途中、少し息が切れたので歩くと、暗闇の中、斜め上の方から撃鉄を起こす音が聞こえた。

 

すべて監視されて、見張られているのだと悟った。

だからひとりずつ、なるべく止まらずに走らなきゃいけないんだ。

 

私は悔しかった。

 

突然やってきたよく知らない国の軍隊に、私たちの平和な日常が奪われてしまった。

 

 

 

夢の中で戦争の一部を体験して思ったこと。

戦争は暴力を遥かに越えている。

子供の殺戮に兄弟を加担させるくらい、言葉にならない卑劣さを極めたものだった。

 

 

 

私は目が覚めてもショックが抜けなかった。

手に力が入らず、ようやく夢だったと安堵できた時、現実に殺された子供はひとりもいないことに涙が出た。本当に良かった。

 

 

 

本当に良かった。

 

 

 

でも、本当にそれは夢物語なのだろうか?

 

トランプ当選に、TPP。愛と平和を願う人達が叩き続ける安倍政権。

 

私も三宅洋平を応援していたひとりではある。彼みたいな人は必要だ。

だけど、圧倒的な侵略と対峙した時、彼の耳障りのいい言葉に何ができるのだろうか?

 

安倍は、本当に戦争を起こそうとしているだけなのだろうか?

 

情報は縦横無尽に飛び交っている。真実は思想の数だけある。

 

 

 

そう、真実は思想の数だけある。

 

 

 

だからひとりひとりが情報を咀嚼して、自分はどうしたいのかを考えなきゃいけない。

 

信頼できる情報だから、とか、この人が言うなら間違いない、とかじゃなく。

 

 

それは、ひとりで暗い道を駆け抜けなきゃならないことに似ている。

すぐ横で、暗闇から撃鉄を起こす音が聴こえるような道を。

 

 

だけどそれを見つめた先に、本当の平和の形が見えてくるのかもしれない。

 

 

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思考することとは別に、私は心から願います。

 

 

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世界から戦争がなくなりますように。

 

 

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