DJ その2
「さっちゃん、この夢どう思う...?」
不安そうな顔で聞いてくる幼馴染みに、
「そんなことより鬼が」
なんて、さらに怖がらせるようなことは言えず、鬼もかなり離れた距離に佇んでいたので、とりあえずはその話の感想を言いました。
「最後、電話で『これ夢で見た』って言った時の『えーそうなの?』っていうリアクションになんか違和感を覚える。。知ってて言ってるみたいな不自然さっていうか、なんだか不気味な感じがする」
そんな様なことを伝えた気がします。
実際のところ そのDJはどんな人なのか、好意を持たれてる感じなのか、いろいろ聞いたのですが、至ってふつうの男の子でいいやつだし、告白されたりストーカーされたりは全くない、と。
じゃあたまたま不思議なことが起きちゃったのかな〜?なんて話していると、ブランコの柵よりさらに後ろの方に、さっきの鬼が移動していることに気づきました。
さっきから幼馴染みの表情も暗いし、日も暮れてきたし、
「...そろそろ帰ろっか!」
「きゃあああ!!!」
突然、幼馴染みが悲鳴をあげて頭を抱え込みました。
「え...っと?大丈夫?」
なんだか空気が異様に重たいのです。
「ごめん...いきなり言われてびっくりしただけ...」
幼馴染みの顔は、引きつっていました。
私たちはそれぞれ自転車を押しながら公園を出て、しばらく無言で並走。
外はもうすっかり暗くなっていました。
200mくらい進んだところにある踏切が、私と彼女の分かれ道です。
踏切で止まると、お互い微妙な顔をしていたと思います。
私は気まずい空気なら、話してしまった方がいいなと思ったので、彼女に言いました。
「さっき、あのDJの話してた時にね...入口のところに鬼がいたの」
幼馴染みは半べそで言います。
「その後、後ろに移動してきたんでしょ...?」
「え!見えてたの!?」
すごく驚きました。まさか見えてたなんて。
しかし、驚くのはそれだけではなかったのです。
「あれは、DJ○○だった」
言葉を失う私に、彼女は続けます。
「私、さっき帰ろうって言われて...悲鳴上げたでしょう...?
あの時、もう私の真後ろに○○が来てたの。それで... なぜか○○は斧を持ってて... さっちゃんが帰ろうって言った瞬間、思いっきり振り下ろされたの」
それで悲鳴を上げてしまった、と言いました。
あの、鬼にしか見えない姿のあれが、DJ○○...?
それはもう、生き霊以外の何者でもありません。
怖がる彼女をなだめ、きっとまだついて来てるだろうDJ○○に、来るならこっちについて来なよと心の中で言い、 幼馴染みと別れて踏切を渡りました。
大通り沿いとはいえ、人が全然歩いていません。
自転車のスピードを上げて家路を急ぎます。
途中、自販機が4台並んでいる場所があるのですが、そこを通り過ぎる時に、私の速度に合わせるように一台ずつ
「ドンドン!!ドンドン!!ドンドン!!ドンドン!!」
と誰かが思いっきり叩いてるような音が鳴りました。
「俺、ついて来てるからね」
と言ってるようで、さすがにめちゃくちゃ怖かったのを覚えています。
こっちについて来なよと言ったのは、こういうのに多少慣れているのと、そもそも私はターゲットじゃないだろうから、私についてくる分には 家に入れないで終わるだけかなと思ったからです。
自販機を叩かれたのは予想外だったけど、やっぱり、家に入ってからはもう何も起こりませんでした。
「さすがに今日は怖かった。この体質何とかならないのかな」
今日の一連の話を父にすると、興味深く聞いてくれてから、
「まっ、うちは神主と画家の家系だからしょーがないのかもなっ!」
の一言で終わらされたというw えっ...
そんな思い出の出来事でした♪
その後、幼馴染はDJ○○とは特に何もなく、平和な年月が過ぎていきました。
あれは一体、なんだったのでしょう...?
逢魔が時、なんて言葉がよぎります。
秋の夕間暮れ、皆様もどうぞお気をつけ下さい。