6番テーブルのお客さん(怖さ★)
カフェでバイトを始めたばかりの時のお話です。
そのカフェは駅前の地下にあり、モノトーンで落ち着いた雰囲気のカフェでした。
お客さんがひとりもいない時にテーブルのお砂糖の補充をしてまわっていると、
「すみません...」
女性の声です。もう一度言いますが、お客さんはひとりもいない店内です。
最初は気のせいかと思い、おかしいなあと思いながらきょろきょろしていると、店長に「どうかした?」と聞かれました。
「いや〜、今すみませんって聞こえたんですけど...気のせいですねw」
と答えると、長く勤務しているバイトの子と顔を見合わせて、
「あら〜、また霊感強い子が入ってきちゃったね」
と言うんです。どうやら、霊感強い人は必ず「すみません...」と呼び止められるそうで、バイトの間では「6番テーブルのお客さん」と呼ばれているとの事。
確かに6番テーブルから聞こえていました。私は、なんとなくその女性は80年代風のウェーブヘアで、誰かと待ち合わせをしている気がしました。
飲食店の仕事に、トイレ掃除はつきものです。
そのカフェのトイレは、ちょうど6番テーブルを通り過ぎて右に曲がった、つきあたりの場所にあります。トイレ掃除に行こうとすると、やっぱり
「すみません...」
と呼ばれました。無視してトイレまで行き、ドアに清掃中の札をかけ、中に入って鍵をかけて掃除を始めました。
「すみません...」
今度はドアの前から聞こえます。怖さと戦いながら、便器を磨いていく。
「すみません...」
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、と呟きながらトイレットペーパーを補充する。
「すみません...」
コンコンコン、コンコンコン、とノックが来た。でも、でも、本物のお客さんかもしれなくない!?と思い、一応大きな声で「はい?」と返事をしてみる。
「すみません...」
やっぱりオマエかー!!!
そして清掃が終わり店内に戻ると、相変わらずお客さんはひとりもいませんでした。
これが毎回だったので、ちょっと限界を感じてこのバイトは早々に辞めてしまいました。
ちなみにこの話を最初に家族にした時、心配した母がお守りを作ってくれました。
お清めの塩が入っていて首から下げられる小さな巾着です。
このアイテムは、残念ながらまったく効力がありませんでしたw