しじみ蝶
そ〜っと近づいて、両手でパッと捕まえる。
小学生の頃、しじみ蝶を捕まえるのにハマっていた時期があります。
小さくて、薄いグレーと紫色の混ざったような あの蝶です。
学校の敷地内にクローバーが群生しているところがあって、そこにはたくさんのしじみ蝶が飛んでいました。モンシロチョウやモンキチョウもちらほら飛んでいましたが、圧倒的にしじみ蝶が多かったのを覚えています。
普通のサイズの蝶って、子供が手で捕まえるには大きすぎてちょっと抵抗があります。すっぽり捕まえられるしじみ蝶は、狩りをするにはもってこいだったのです。
捕まえて虫かごに貯めたり、ずっと手の中に入れておいてペットにしたり。
大人になると容易に想像できることですが、何匹も死なせてしまいました。
ある日、家でごろごろしていると、家の中をしじみ蝶が飛んでいます。
しじみ蝶ハンターだった私はすぐに起き上がり、天井の近くをひらひら飛んでいるしじみ蝶を見上げます。
低いところまで来たら捕まえよう。
そう思った次の瞬間、しじみ蝶は壁の中へスッと消えてしまいました。
その時に私はようやく悟りました。
自分がどれだけ残酷なことをしていたのかを。
虫にも魂があるということを。
それ以来、しじみ蝶を捕まえる遊びはしていません。