それは小3のクリスマスでした。
私にとってサンタさんは疑いようもなく「存在しているもの」だったので、「存在を暴いてやろう」とか「目撃してやろう」なんて気持ちはまったく持っていなかったのです。
きちんと眠っていると、必ずもらえるプレゼント。受け取る代わりに、相手の存在には干渉しない契約。そこには大きな秘密が隠されているようで、気になるけれど、知らなくていいやと思っていた気がします。
ところがその年、あろう事か夜中に目が覚めてしまったのです。
もう一度眠ろうと思っても、全然寝つけない。枕元を見ると、まだ何も置かれていない。これはまずい、早く寝ないと来てしまう。隣で寝息を立てている姉を見て、だんだん焦り始めていく。
その時、部屋の前の階段の踊り場から、誰かが電気のスイッチを押す音が聞こえました。
パチ、パチ、パチ、パチ、と、ゆっくりonとoffを何度も繰り返す音がするのです。
なんだろう??と思っていると、何度目かで部屋のドアの隙間から明かりが差しました。ようやく電気がついたようです。
でも、普段、踊り場の電気がつかないことなんてないのに変なの、と思いながら布団をかぶり、寝たふりを続けていると、ゆっくりドアが開く音がしました。
さ、さ、サンタさんが来たああああああ!!!!
頭から布団をかぶっているので息苦しい。でも寝たふりを続けないとプレゼントがもらえない!!!
細心の注意を払いながら寝たふりを続けていると、足元のドアから誰かがゆっくりとこっちへ歩いて来るのです。その人はすごく落ち着いた雰囲気で、一歩、また一歩とゆっくり近づいて来て、ついに私と姉が川の字で寝ている真ん中を歩き始めました。
その人が布団の上を歩く度に、掛け布団に重さが伝わって来ます。
私はいけないことだと知りながら、頭からかぶった布団の隙間から目を開けていました。
一歩、一歩、ついに目の前に差しかかります。
私ははっきりと見てしまったのです。
赤い生地の裾に、白いふわふわのついたズボンを。
その人は枕元で一瞬立ち止まり、そのまままっすぐベランダに通じる窓まで行き、消えてしまいました。
え...
プレゼントは...?
私の頭の中で興奮と混乱が入り乱れます。
そこで再び、誰かが部屋のドアから入って来ました。
私は条件反射でまた寝たふりをしていると、ガサゴソと音がして、何かが枕元に置かれたのがわかりました。
「ふふっ、よく寝てる〜」
と母の声が聞こえ、その時に始めて、隠されていた「大きな秘密」の正体を知ったのです。
本当にサンタクロースが来たこと、
そのサンタクロースは何もくれなかったこと、
プレゼントは両親からだと知ったこと。
一夜で起きた出来事は、正直いまだに消化できていません。