京都ひとり旅 2.一期一会
清水寺を後にした私は、再び茶わん坂へ。
道の両端に色々な器のお店が立ち並びます。
振り返ると、美しい清水寺が。
ありがとう、さようなら。
予約しているホテルにチェックインするため、京都駅前を目指します。
土地勘もなく地名にもピンとこない普段引きこもりの私にとっては、ロンドンも京都もある意味一緒だな、なんて思いながらバスを待っていました。
未知の世界。
だけど、Googleと誰かに聞けばわかる世界。
ようやくバスが来たのですが、数人乗ったらもう満員。ええっ
「次のバスをお待ちください」と言ってバスが去っていきます。
そんなことが3回繰り返され、ようやく「これはタクシーに乗るべきか」と気づく。
だけど、バス停でバスを待ちながら「タクシーが来たら捕まえよう」と思っているのは私だけではない。
タクシーが来た瞬間、私より手前の人が手をあげて颯爽と乗って行きました。
ここでふと思うこと。
「私はついてるし導かれてるから、きっとこれでいいんだ。乗れる時は乗れるさ」
人を押しのけてまで乗るのは嫌なので(寒いからおばあちゃんとか先に乗って欲しい)
次にタクシーが来た時、他に乗る人がいなそうなら挙手しようと決めました。
そしてやって来たタクシー。
手をあげる人はいない。よし、これが私の乗るべきタクシーだ。
「ああ〜良かった。助かりました」とタクシーに転がり込むなり感謝の気持ちを伝えると、
「それはこちらこそやで〜。誰か乗ってくれへんかなーって今走ってたんですわ」
と言うのは年配の運転手さん。
どちらから来たんですか?東京です、なんてやりとりしつつ、最近天皇陛下たちが来た時にたまたま見れたことなどを話してくれました。
「僕ね、タクシー勤続45年なんやけど、そろそろ本出したいと思ってんねん」
突然語り出す運転手さん。
「どんな本かと言うとな、人生で大切なのはあいうえおなんやで、っていうことを書きたいんや。
『あ』は愛やな、もちろん
『い』は命や。これは変わりがどこにもあらへん。一回きりの人生なんや
『う』は運。運は大切やな
『え』は縁。今日タクシーでこんな話を聞かされてるのも縁やな
『お』はな、これは最後は恩なんや。人様に恩を返していく。これも本当に大事なこと
最後にもうひとつの『あ』。これは『ありがとう』な。
そんなこと書きたいねんけど、でもいいや、あんたちょっとどこかに書いといてや」
まさかの「書いといて」!!笑
やっぱり私が乗るべきタクシーやったな(関西弁)
「あんた何してる人?」
「絵描きと占い師です」
「僕の運勢どない?生年月日と名前ここに書いてあるやろ?」
ネームプレートを見ると「〇〇満徳(みちのり)」さんと書いてある。
「徳が満ちるってすごくいいお名前ですねー!」と言うと「せやろせやろ」とはしゃぐ運転手さん。
タロットがないとちゃんと占えないけど、こうだと感じますよ、とお伝えすると嬉しそうに頷いてくれました。
京都駅に着いた時、後部座席を振り返ってまじまじと私を見て、
「ええ顔やな。ええ目をしてる。あんた幸せやろ?な?」
と、私よりもっときれいな目で運転手さんは言う。
「ああ、あんたはこの先も大丈夫やな。良かった。ええ時間やったで、おおきに」
お互いの心に「一期一会」の文字が浮かんでいたと思う。
お互いに心から「ありがとう」と言い合い、お別れしました。
時間にして10分ちょっとだったかな。不思議なギフトでした。
展覧会のレセプションで作家代表のご挨拶をされた方が、やっぱり「恩」のお話をしていたんですね。
映水さんという絵師の方で、東久邇宮文化褒賞を受賞された時のお話をしていて
「受賞したり勲章を授かる、一段上に登るというのは、そこから恩を返していく時間になる、ということなんだよ」
と人に言われて「ああそうか。それならこれからたくさん恩を返していこう」と思った、というスピーチだったのですが、
恩を返す
という言葉に、なんだか心に灯るものがある私なのでした。
京都ひとり旅編、まだまだ続きます。
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