謎はいつもそこに

子供の頃から自然に生活の中にまざっていた不自然なものたちのお話。

本当に怖いのは(怖さ★★★★

高校生の時、家の近くのコンビニでバイトしていたことがあります。

ある時、お店に私宛ての電話がかかって来ました。

 

「わたくし、○○病院の医師をしております××ひろしと申します。落ち着いて聞いていただきたのですが、先程お母様が事故に合い、搬送されてきています。ケガはたいした事ないのですが、サチコ様に連絡してほしいとおっしゃっているのでご連絡いたしました。

こちらにはすぐ来られますか?」

 

頭が真っ白になりました。

「はい、すぐ行きます」

声が震えてしまったのを覚えています。

「受付にお名前言っていただければすぐにご案内しますから。あ、あとご自宅にはまだお伝えしていないので、よろしければお電話番号教えていただけますか?」

「はい...111-1111(仮)です...」

 

店長に事情を話し、すぐに早退。コンビニには自転車で来ていたので、○○病院ならすぐに行ける!と自転車を走らせましたが、しばらく走ったところでお財布を持っていないことに気がついて自宅へ寄りました。

今思うと、自転車だしお財布を持っていなくても困らないはずなんですが、その時はなぜかお財布を取りに帰ることを選んだのです。

 

自転車を止めるのももどかしく急いで家に入る。もう家族はみんな病院に向かったのか、家の中がしんとしている。半分、自分を奮い立たせるために、

「ただいま」

と言ってみました。

 

「あれ?早くない?もう終わったの?」

 

と、母がキッチンから出てきたのです!!もう頭の中が大混乱で、母を見つめたまま動けなくなってしまいました。もの凄い形相で固まる私を見て母が言いました。

 

「どうしたの?ねえ、もしかして変な電話かかってこなかった!?」

 

私が帰ってくるちょっと前に、無言電話がかかってきたと言うのです。

私から聞き出した電話番号が合ってるのか、確認の電話だったのでしょう。

父の帰宅を待って警察に行き、電話番号もすぐに変えました。

コンビニのバイトも事情が事情なのですぐに辞めさせてもらい、しばらくは落ち着かない日々を過ごしました。

 

1年以上経ち、もうすっかり落ち着いた頃、今度は近所ではなく街中でバイトを始めました。デパ地下のレジ打ちです。ここは友達と一緒に働いていたのですごく楽しいバイト先でした。

働き始めて1年半くらい経った頃、いつものようにレジを打ってると「110円」の金額に対して「105円」トレーに置いたお客さんがいました。

ん?と思いお客さんを見ると、現場系の格好をした背の低いおじさんで、どこか他の場所を見てるので間違いに気づいていない様子。

「あの、すみません、110円なんですが...」

と言うと、んん!?という顔でトレーを覗いてから

「ごめんごめん」

と笑い、しばらく小銭入れの中を探してから50円玉を出しました。私も笑顔でそれを受け取り、お釣りの45円を渡しました。

お客さんはお釣りを受け取りながら私の手を握り、にかーっと笑いながら

 

「(私の旧姓)さん、大人になったね」

 

と言ってげらげら笑いながら走っていなくなりました。

 

どんな霊よりも、生きた人間の方が怖いと思いませんか?

私はなんだかんだ運がいいので実害はなにもなく済みましたが、ストーカー殺人事件とかニュースで流れる度、あの下卑た笑顔が頭をよぎります。

でも何となく、あの人はもうこの世にはいない気がする。

ただの直感ですけどね。

 

ひとつ不可解なのは、あの電話の声と、レジの人の声が、全然違う種類だという事。

レジの人が肉体労働者なのに対し、コンビニの電話の人はもう少し若くてインテリっぽい話し方でした。

まあ、無事におばさんになった今では、どうでもいい事なんですけどね。