胎内記憶 その3 旅立ちの時
何となく、おなかの中にいた時の情景を覚えています。
そこは薄暗く、たまにピンクの明かりがぼんやりと灯る、静かな場所でした。
薄暗い洞窟の温泉のような、生暖かくて横長の空間。
そう、初めは横長の空間だったのです。
その部屋の中で、私はちょっと退屈でした。でも孤独ではなく、安心感の中でひとりの時間を楽しんでいました。
床のようなところにずっと気になるものがあって、それはごつごつした低いテーブルのように見えます。時々それに触ってみたり、眺めてみたりしていました。
広かった部屋はいつしか小さくなって、自分が大きくなったのだと悟りました。
あまり身動きがとれなくなってきて、私はもっと自由に動き回りたい!と思い始めます。
ここから出てみたい。
そう思った時に、ずっと気になっていたごつごつした低いテーブルのようなもの、頭に当たっているこれこそが「出口」なのだと気づいたのです。
私は3月生まれなのですが、子供の頃から春が近づくと
「新しい世界が始まる」
というわくわくした感覚がいつも蘇ります。小学生の頃その感覚を友達に言っても伝わらなかったのですが、3月の風が吹くと懐かしくて懐かしくて泣きそうになるのです。
始まる!始まる!嬉しい!という気持ち
世界中が祝福してくれているような大きな力
あなたが産まれてきた時も、世界中が大喜びしていました。
すべての命が、祝福されて誕生しているのです。
illustration by funcy-qutton (twinkleサチコ)