その日、私は祖母に手を引かれながら公園を散歩していました。
記憶の中の自分の目線の高さから、2歳くらいだったんじゃないかと思います。
私の足元を大きなアリが通り過ぎて行きます。
「あらあ、大きなアリねえ。こんなに大きなアリ見た事ないわ」
祖母がそう言ったので、それが祖母にとっても見た事のないサイズのアリだということがわかりました。
その大きなアリの記憶が残ったまま、私は小学生になりました。
遠足で動物園に行った時、まずは昆虫館へ入りました。
めずらしい昆虫のさなぎを見たり、蝶々を眺めたり、順路通りに進んで行きます。
「世界最大のアリだって〜」
私より先を歩いているクラスメイトが言いました。実物ではなく、実物大の写真のパネルを見て騒いでいる様子。
うわーでかい!と他の誰かも盛り上がっています。
あ!あの時公園で見たアリがまた見れる!
私はわくわくした気持ちでその写真パネルを見ました。
そこには、3cm程のアリが写っています。
え?これ?
私は困惑し、近くにいたスタッフのお兄さんに「これは本当に世界最大なんですか」と聞きました。もっと大きなアリはいないのですか、と。
「そうだよ。これが世界最大です」
そんなはずはない。だって...
「私、30cmくらいのアリ見た事あるんですけど」
クラスメイトは大笑いでした。いるわけねーだろー!
スタッフのお兄さんも笑いながら、うーんそれはちょっとあり得ないな〜、と言います。
私はそれ以上「見た」と言い張っても証明できる術がないので、じゃあ夢かな〜と言ってその話はおしまいになったのですが、当時の私は本当に困惑したのです。
確かに公園で30cmのアリを見たのに、そんなものは存在しないと言われてしまったのですから。
大人の靴くらいのアリが、確かに歩いていたのです。
家に帰って祖母に聞いても、アリのことは覚えていませんでした。
やっぱり夢だったのかなぁ、とも思うのですが、そのアリを見た場所というのがまさに妖精の丘だったことが、ただの夢と片づけられずにいる理由のひとつだったりするのです。
ちなみに世界最大のアリ
世界最強のアリ
30cmのアリ。
アリえるのか、アリえないのか。
不可能とは通過点だ。不可能とは可能性だ。
今日も読んでくださりアリがとうございました。