○県の神社へ行く日がやってきました。
迎えに来てくれた女性の車に乗り込みます。助手席には女性のお友達が乗っていました。学生時代からの親友のようです。
車内は今回の目的を忘れてしまうくらい和気あいあいとしていましたが、いよいよ、例の神社へ到着。
車を降りて見渡してみます。イメージ通りの、鬱蒼と木が生い茂っている神社。
でも、木のせいだけではない「薄暗さ」を感じます。なんて言うか、いろんな霊体やエネルギーが吹き溜まっている感じ。本来きちんと流れて浄化されていくべきものが、この神社に留まり続けている、そういう種類の重さ、薄暗さです。
この神社で間違いなさそうだ。
そこの地域は女性の親戚が住んでいるそうで、近所の人もわりと顔見知りだと女性が言いました。この神社にも子供の頃から遊びに来ていたようです。
そこで、女性が「もしかして!」と言いました。
「この近くのお家に昔「○○さん」っていう知的障がいの方がいたはず!でも、こういう古い価値観の年寄りばかりの田舎だと存在を隠されてしまうというか...なんかこっそり生活させてた気がする。ここに来たら思い出した!」
じゃあ、その方が亡くなっていて、女性に取り憑いているのか?
その方の家を知ってるかもしれない、と言うので、3人で歩いて探してみました。
田舎によくあることですが、その辺りは同じ名字の表札ばかり並んでいます。それでも多少、土地勘があって知り合いもいる女性は、だいたいの家の場所を探し当てました。
「多分、あの家か、その奥の家だと思う」
そんなやり取りをしていた時、
「あらあ、(女性)ちゃん!?(女性)ちゃんじゃないのお、何年ぶりかなあ!」
と、にこにこ笑顔のおばあさんが話しかけてきました。
仕事は何をしてるのか、結婚したのか、おばあさんは嬉しそうに質問をし続けます。私とお友達さんも笑顔で挨拶して、しばらくおばあさんと立ち話をしていました。
年々過疎化していく場所だから、おばあさんにとって若い話し相手は本当に嬉しいものだったのでしょう。
昔話に花を咲かせつつ、女性はものすごく自然な流れで切り出しました。
「懐かしいなあ〜。ねえ、そういえば、この辺に○○さんって人いたよねえ?お隣のお家だったっけ?」
突然おばあさんの顔から笑顔が消えました。
今の今まで笑顔でしゃべり続けていたおばあさんが無表情になり、私たちを一瞥すると、何も言わず家の中へ入って行ってしまったのです。
それは、○○さんが何か不穏な死を遂げたと、言っているようなものでした。
つづく