少しずつ怖い話も書いていきます。
私が二十歳くらいの頃、隣の家の方が他県へ引っ越しました。
私の実家は住宅街の中のちょっと入り組んだところにあるので、中古住宅では売れなそうだから隣の住人に土地を買ってもらった方がいいと考えた不動産屋さんが、うちの両親に話を持ちかけてきたんです。
両親ともばりばり働いていたのでその申し出を快諾し、土地を買って家を増築することになりました。
もう、家族みんなテンションが上がって浮かれていたのですが、その頃からおかしなことが起き始めました。
夜になると、買った土地からザク、ザク、と土を掘る音が聞こえてくるのです。
夜みんなが寝静まる頃に音が聞こえ始め、その音はしばらく続きます。
気になるけど庭を見ても誰もいないし、特に穴が掘られてるわけでもない。
もしかしたら私にしか聞こえてないかもしれないと思ったので、無駄に家族を怖がらせないように誰にも言いませんでした。
ある夜、庭に面したリビングで友達と電話していたら、窓のすぐ向こう側からザク!ザク!と始まりました。その時に改めて、やはりこれは生きた人間じゃないと確信。
生きた人間なら、明かりのついた窓から話し声が聞こえてる場所で、いたずらなんてできないはずだから。
そろそろ親に話そうかと思っていると、母の方から話を切り出してきました。
「向かいの○○さんにね...?夜になると誰か庭に穴を掘ってない?って言われたのよ...」
聞こえていたのは私だけじゃなかった!向かいの家まで聞こえていたとは。
「うん、私もずっと聞こえてたよ」と言うと、母は
「私もずっと聞こえてたわよ」と怯えていました。聞こえてたんかい!
私は霊媒師ではないので、とりあえず出来ることはなんだろうと考えた時に、ひとつ思い当たることがありました。
地鎮祭はしたけれど、お墓参りはしてないなと。
土地を買うっていう大きな出来事を、ご先祖様に報告しないとなんかいろいろまずいんじゃないかと思ったのです。
すぐに家族にそれを伝えたら、両親ともハッとした顔をして、
「最後に墓参り行ったの、いつだったっけ...」
と言っていました。
とにかくお墓参りに行こう!週末に行こう!ということで話はまとまりましたが、今度は電化製品が次々に壊れ始めました。
電子レンジ、オーディオ、電気、炊飯器、と謎の連鎖が起きて、相変わらず庭を掘る音は聞こえてくるし、なんだか疲労する数日間だった気がします。
お墓参りの当日はいいお天気で、家族みんなでお墓まで行くと、お墓のまわりが金色にきらきら光って見え、それを見た時に、もう大丈夫だなと感じました。
それ以降、土を掘る人は現れなくなり、増築も無事に完成。
そうそう、あの時お墓参りを終えて帰宅すると、壊れたはずのオーディオがお墓と同じように金色に光っていて、試しに再生ボタンを押してみたら聴きなれた曲が流れ始めたのです。