父の状態は日によって違い、その些細な変化に私と母は一喜一憂して過ごしていました。
お見舞客の多さと、父の状態があまり良くないため、個室へ移動することになりました。
これで24時間面会できるし、泊まることもできるようになったので、母と交代で泊まり込んだり、父を挟むようにして母とふたりで泊まったりもしました。
夜中でも定期的に看護師さんがいろいろなケアをしに来てくれていて、医療って本当にすごいな〜!って思いました。今でも感謝しかありません。
ある日、昼間だったのですが、疲れていたので宿泊用の簡易ベッドで少し眠っていました。
夢の中に、ものすごく鮮やかな、光輝く人が出てきました。
その人は男性で、細かくウェーブした長い黒髪を後ろでひとつに束ねていて、聡明そうなおでこ、きりっとした眉毛、そして印象的な目はとても力強い光をたたえています。
服はターコイズブルーとか、グリーンっぽいのですが、その彩度が普通じゃない。
この世のものとは思えない鮮やかさで輝いていて、色の存在感がものすごいのです。
そしてマントのような布を纏い、その布がたなびく度にキラキラ光っています。
「あなたは誰ですか?」
尋ねると、名前を教えてくれました。
目が覚めた私は、たまたま持ってきていたあの本をすぐ鞄から取り出しました。
えーーと、今の人なんて言ってたっけ、えーとえーと、
あ!ガブリエルだ!
大天使ガブリエルのページを開きました。初めて見るページです。
ガブリエルのシンボルカラーに、グリーンやターコイズブルーと書いてありました。
「宝石のように光を放っている」とも。
やっぱりあれはガブリエルだったんだ。
そして、読み進めていた私は、ある一文でハッとしました。
そこにはこう書いてあったのです。
「ガブリエルは、聖なる人々の臨終間際に姿を現します」
ちょうど、担当の医師に「あと1週間もつかどうか…」と言われた次の日のことでした。
photo by twinkle sachiko