謎はいつもそこに

子供の頃から自然に生活の中にまざっていた不自然なものたちのお話。

私の世界 1. 家

父はガンが発覚した当時、半年もつかどうかと宣告されましたが、3年経っても元気に過ごしていました。

それでも、いつ父が介護になってもいいようにと、実家を建て替えることになったのです。

 

建て替えに向けて引っ越し準備をする間、いろいろと荷物をうちで預かることになりました。

その日の午後、両親が荷物を持ってやって来る予定だったのですが、私はソファでうとうとしていたようです。

 

 

夢の中で、知らないマンションの一室にいました。

小さなキッチンには亡き祖母がいて、私が来たのを見てお茶を淹れてくれました。

湯飲みに緑茶が注がれるのを横目に見ながら、私は奥の部屋の前まで行き、ドアに手をかけました。

 

「そこね、とりあえず急いで片付けておいたけど…」

 

背中に祖母の言葉を聞きながら引き戸になっているドアを開けると、夢とは思えないリアルさで、ものすごく冷たい空気がブワッと私の体を包みました。

真夏にコンビニに入った時みたいな感じなのですが、もっとすごく嫌な冷たさです。

 

その部屋には中央に白い棺が置かれていて、部屋の隅にはいくつかのパイプ椅子があります。感覚的に、その棺は男性が入るものだとわかりました。

 

そこでハッと目が覚め、言葉にならない気持ちでいっぱいになりました。

これまでの経験上、それがただの夢なのか予知夢なのかくらい、もうわかっているからです。それが抗えない「決定事項」だということも…。

 

インターホンが鳴りました。両親が来たみたいです。

 

玄関まで行き父を見た時、ドキッとしました。明らかに調子が悪そうなのです。

さっきの夢と目の前の父が不協和音を奏でている気がして、平静を装いながら心臓がどきどきしていました。

 

両親はうちに来る前に、家が出来上がるまでの間住む、仮住まいのマンションを見てきたと言います。

その間取りを聞いて、私は自分の手が冷たくなるのを感じました。

 

それは私がさっきまでいた夢の部屋と同じだったからです。

 

父は新築に間に合わないかもしれない。

 

何とかしなければと思い、翌日から2日連続、父に温灸をしに実家へ通いました。

ところがその翌々日の朝、父は意識がなくなり病院へ運ばれてしまったのです。

 

 

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