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謎はいつもそこに

子供の頃から自然に生活の中にまざっていた不自然なものたちのお話。

アイソレーションタンク その1 私の消滅

アイソレーションタンクに入った時のことを、思い出して書いてみます。

 

アイソレーションタンクとは、イルカとのコミュニケーションをまじめに研究したリリー博士という人が開発した五感遮断装置です。

 

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防音タンクに入り横になると、海水成分である硫酸マグネシウム(にがり)入りの水がちょうど死海のようになっていて、誰でも簡単にぷかぷかと浮かぶことができます。水は人肌と同じ温度に設定されているため、無感覚状態になることができます。ひとことで言うなら、無重力体験、胎児体験。

脳がα波やΘ波の状態に入りやすくなるため、究極のリラクゼーションマシンといわれています。五感を全てシャットアウトするという、非日常的な体験は究極のアートとも言えます。幻覚や体外離脱ができるという噂がありますが、そういうことはほとんどありません。タンクに入った人は感覚が敏感になり、シンクロニシティーが増えると言われています。タンクの本質は、感覚遮断の体験よりむしろ体験後の現実世界の変容にあると言えるかもしれません。

以上コピペ。

 

頭から足先までシャワーできれいに洗い清め、ファラオの棺のような物凄い存在感を放つタンクへ。
扉を開けると中は真っ暗。ぽっかり洞窟のように闇が広がっています。

耳栓をしてそのまま裸で入り、扉を閉め、水に浮かびました。

 

おお、浮く!生暖かい。そして全く、何も見えない。


目を開けても閉じても違いがわからないので、閉じてからだの力を抜いていきました。

 

初めに受けた説明で、「タンクはきちんと空気が循環していて水の温度も一定に保たれているし、無臭になっているんだけど、すべての感覚をシャットアウトしていくと恐れやネガティブが息苦しいとか暑いとか、匂いが気になるとかの感覚で現れてくる」と説明を受けてたんですが、まさに。


なんか...息苦しい。

 

一度出てシャワーを浴び、またタンクへ。今度は全然苦しくない。そして徐々に瞑想状態に入っていきました。

 

呼吸に意識を合わせ、頭の中を空っぽにしていきます。

 

次第に腕の感覚がなくなってきました。腕というものがない感覚です。

足も消えていきます。

胴体も... そして、頭も...

 

どくん、どくん、どくん、

 

私という存在は、鼓動の音だけになってしまいました。

広い宇宙の中に、私という鼓動だけが浮かんで長い旅をしているようです。

 

ついにはそこに広がっている宇宙すらもなくなりました。

 

すべてが消滅して、音もなく「無」があるだけ。

 

 

 

突如、鮮やかに、私は海をすごいスピードで泳いでいました!

 

少しサンセットに近づいているような、黄色く明るい空と、深い場所なのでしょう、濃いブルーの海。

私は、潜ったり水面から飛び出たりを繰り返しながら進みます。

ふと横を見ると、両側にイルカが泳いでいます。

同じ速度で彼らが進んでいるのを見て初めて、私もイルカの姿をしていることに気がついたのです。

 

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 そのうちに、タンクに入っている自分へと意識が戻り、タンク終了の音楽が聞こえてきました。

 

「幻覚や体外離脱ができるという噂がありますが、そういうことはほとんどありません。」

 

いえいえ、どう考えても体外離脱でした。過去生かな。

 

懐かしく穏やかで、不思議な光が交錯している場所。暖かい孤独。

それは胎児の頃の世界に、とてもよく似ていました。

 

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[ここではないどこかで]

illustration by funcy-qutton(twinkleサチコ)