謎はいつもそこに

子供の頃から自然に生活の中にまざっていた不自然なものたちのお話。

はじめてのゆうれい騒動

 

 

小学生の頃、クラスメイト達とちょっと遠くの公園まで行ったことがありました。

学区外の、アスレチックがあるような魅力的な公園です。

 

そこは山を切り拓いて公園にしたような作りで、傾斜の急な芝生ゾーンがあったり、雑木林の中を歩ける小道が作られていたり、一緒に来ていた友達の中には「ここお父さんに連れて来てもらったことあるー!」なんてはしゃいでる子もいました。

 

その公園を散策してまわり、竹藪の近くを通りかかった時でした。

 

竹藪の中に、白い着物を着た女性がいるのです。

頭に白いハチマキのようなものを巻き、ハチマキの隙間にはろうそくが刺してある、まさに「丑の刻参り」姿の女性です。

 

そんな姿で虚ろな目をして佇んでいるのに、友達は誰も何も言いません。

私は近くにいた子に「ねえ、あの人ちょっと…」と言いながら竹藪を見ると、そこにはもう誰もいないのです。

 

一瞬で消えてしまいました。

 

物心つく前からいろいろ不思議なものを見てきた私ですが、そこまでオーソドックスな幽霊を見たのは初めてだったので、びっくりして泣いてしまいました。

 

友達はみんな心配してくれ、泣いてる私をなだめながらも、この非常事態にテンションはどんどん上がっていきます。そう、小学生ですから。

 

「見えたってことは、取り憑かれるってことじゃない!?」

「今夜家に現れるかも!」

「えー!じゃあうちにも来るの!?やだ〜うわあああん」

 

ついには泣き出す子まで出てきました。もう大パニックです。

 

何人かが私を家に送ってくれたのですが、その道中で誰かが言いました。

 

「そういえばテレビでお祓いのことやってた!確か、確か、大根を彫刻刀で彫って仏像作るんだよ!すごい効き目があるんだって!」

 

もうその場にいる全員が希望を見た瞬間でした。

 

大根で、仏像を彫る。

助かる道は、それしかない。

 

私の家に着くと、みんな我先にと母に事情を話します。

私が幽霊を見たくだりはそこそこに、大根!おばちゃん大根ある!?ないなら買いに行って!さっちゃんが呪われちゃう!大根だよ大根!!

 

 

大根!だいこん!!大根を早く!!!

 

 

 

「大根ならあるわよ〜」

 

祖母が冷蔵庫から大根を持ってきてくれたので、それを見てみんな安堵して帰っていきました。

でもこれで解決ではありません。

そう、大根を仏像にしなくてはならないのです。

 

騒ぎを聞いて怯えた姉が、「ママ早く彫って!呪われちゃう!」と急かすのですが、いきなり素人が大根に彫刻できるわけもなく、数分後、ものすごく雑なトーテムポールみたいなものが出現。

 

神々しい彫刻が出来上がるもんだと(ナゼか)少しも疑わなかった私は、そのイメージと現実のギャップに恐怖の感情がスッと覚めたのを覚えています。

 

いや… これは…  ないよな、と。

 

「すごい効き目があるんだって!」

 

友達の言葉が蘇ります。確かにすごい効き目でしたね。

一応持ってみたりもしたのですが、大根の匂いと水分で、非常に不快な思いをしました。何よりそのビジュアルがもう…w

 

「お守りになった大根は食べたら御利益があるよ」という祖母のさすがなフォローにより、トーテムポールは刻まれて、その日の夕飯の味噌汁になりました。

 

 

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